すぎナビ(防災地図)や杉並区地震被害想定AR等、杉並区公式アプリは充実しているのか?――東京都全自治体比較表付
訂正:すぎなび(防災マップ)アプリには公共施設、都市計画、防災のほか、観光、文化、自然、統計情報、道路、福祉イベントなどで切り替えできるとのご指摘がありました。筆者のアプリではスクロールに難があり確認できなかったので気づきませんでした。お詫び申し上げます。訂正のブログを近日中にアップします(2019.3.12)
すぎなび(防災マップ)アプリが高機能「すぎナビ|杉並区電子地図サービス」のスマホ/タブレット版であることを追記しました(2019.4.2)
ときどきスマホに入っているアプリを整理します。勢いでインストールしてみたものの、あまり使っていないものを削除します。筆者は仕事の関係で2008年からスマホを使い続けているので、10年以上この動作を繰り返しています。年をとるにつれ、使わないアプリが多くなってきたような気がします。最近は、杉並区の公式アプリ、これを残すかどうか、いつも悩みます。
今回の自問自答は、杉並区公式アプリについての印象です。それらは充実していると言えるのか、評判はどうなのか、周囲を見渡して客観的にどうなのか、などの雑感です。
結論から述べますと、先進的な取り組みは評価するが改善の余地あり、です。
贔屓目に見ると数は少ないが先進的なアプリ
App StoreやGoogle Playで「杉並区」「すぎなみ」のキーワード検索をすると、5つのアプリが出てきます。
①なみすけのゴミ出し達人(マスター) 2013.12リリース
②すぎなみネットでトラブル解決支援 2015.7リリース
③すぎナビ(防災地図) 2015.11リリース
④杉並区地震被害想定AR 2018.10リリース
⑤マチイロ(広報すぎなみ) 2016.10リリース
①はごみ出しアプリ。この種のアプリとしてはリリースが早かったですね。今はマルチリンガル対応になっています。運用管理は環境部です。
②は若年層のトラブルシューティング支援ツールとしてリリースされたものです。匿名メールを送り、相談員が回答するという、従来の電話型ホットラインをスマホに拡張したもの。現在、STOPitが広まりつつありますが、WIREDにSTOPitの米国事例が紹介されたのが2015年3月でしたから、小中学校のいじめ対策という点では、これも全国的に見て早い取り組みだったと言えるのではないでしょうか。運用管理は教育委員会直下の済美教育センターです。
③は災害時に被害状況を共有しあうことを目的としていて、平時には「公共施設案内、防災マップ、洪水ハザードマップ、消火器設置場所、杉並百景、指定・登録文化財、公園・緑地、ある区マップ、子育て総合マップ、自転車駐車場、AEDマップ、公衆浴場(銭湯)、路上禁煙地区、路線図、人口マップ」を閲覧できます。電子地図サービス「すぎナビ」のiOS/Android版なので、高機能ですが重たいです。運用管理は危機管理室と都市整備部です。
④は杉並区が公表した「地震被害シミュレーション結果報告(建物被害編)」「同(避難者予測・ライフライン被害編)」を元に、スマホカメラで撮影された実写の映像に、現在地の防災情報が合成、表示されるARアプリです。運用管理は③と同じです。
⑤は全国的に展開している自治体広報紙配信アプリで読める「広報すぎなみ」です。
アプリの評判など
①なみすけのゴミ出し達人
杉並区の一人あたりのごみ排出量は7年連続で23区内で最も少なく1日あたり470グラム。分別事典が役に立っているのでしょう。杉並区転入時に真っ先に入れるべきアプリですね。ただ、筆者がインストールしているiOS版アプリは画面スクロールに問題があります。また、アラーム機能が効かないというレビューコメントがありますので、アップデートに期待です。
杉並区ごみの排出量が23区最小「なみすけ」アプリ効果も(高円寺経済新聞)
GooglePlayのレビュー
AppStoreのレビュー
APPLIONのレビュー
②すぎなみネットでトラブル解決支援
漢字にルビが振ってあるページとそうでないページがあります。ルビ付きページの対象となっているユーザー、つまり小学生はこのアプリの存在に気がつくのでしょうか? 将来はSTOPitと併用することになるのでしょうか? 教育委員会が運用管理するので「DV」が抜けてますが「トラブル解決支援」ならすぎなみDV専用ダイアルとの統合もアリかもしれません。
「すぎなみネットでトラブル解決支援システム」を視察(葛飾区議会議員 江口ひさみのブログ)
GooglePlayのレビュー
③すぎナビ(防災地図)
非常時に役立つアプリだが平時にも使わないとイザという時に役立たない、という運用管理者のジレンマがよく分かるアプリです。防災系アプリは黙って入れておく、という態度が正しいのかもしれませんが……。Web版で慣れておくしかありません。
災害に遭った時にいざ使おうとしても、使い慣れていなければ、役に立たないかもしれないということで、今後は、さらに日常的に使えるようなものにしていきたいと話していました。(「現場にアタック│森本毅郎・スタンバイ!」より)
GooglePlayのレビュー
AppStoreのレビュー
現場にアタック│森本毅郎・スタンバイ!(TBSラジオ)
④杉並区地震被害想定AR
ネットの口コミを見つけることができませんでした。開発元のCAD CENTERは「ARハザードスコープ Lite (東京23区版)」もリリースしています。
非常時の備えを平時に語るのは難しいですが、「すぎなび」と「地震被害想定AR」を常に使うアプリに進化させるとしたら地図コンテンツを追加して散歩アプリ化させていくことなのでしょうね。区の文化財も地図に加えてはいかがでしょうか。遺跡地図など注意を引くのでは?
⑤マチイロ(元i広報紙)
「マチイロ」は、一般社団法人オープン・コーポレイツ・ジャパンが自治体広報紙のオープンデータの利活用実証研究を目的に、自治体等が発行する広報紙データを収集し、インターネットで無料配信するサービスです。。杉並区の広報紙もそのなかの1つという扱いになっています。
東京都全自治体のアプリ一覧とその特徴
行政は、アプリ開発とその運用にどこまで関わるべきなのでしょうか。オープンデータを使って民間が作るべきなのでしょうか。あるいは、ホームページをランディングページとして、主要SNSの中で誘導施策のみを展開していくべきなのでしょうか。そんなことを考えながら、東京都内の自治体をざっと見渡してみました。潜在ユーザー数として人口を、地図系アプリ用の目安として面積(平方km)を、開発・運用予算の目安として一般会計歳入(億円)を入れました。数字は端数処理をしてます。特徴的なアプリでは?と思った場合はその旨記入しました。一覧には不備があると思います。コメントいただければ修正しますので、よろしくお願いします。
自治体 | 面積 | 人口 | 歳入 | アプリ数 | DLページ | 特徴 |
東京都 | 2194 | 13,843,403 | 69641 | 7 | 検索結果 | 防災、子育てを各自治体が利用。観光を4種 |
足立区 | 53 | 680,269 | 2796 | 7 | 一覧 | ひとり親家庭用アプリ |
荒川区 | 10 | 217,265 | 944 | 3 | 検索結果 | - |
板橋区 | 32 | 578,127 | 2068 | 4 | 一覧 | VR/AR観光アプリ |
江戸川区 | 50 | 693,616 | 2489 | 2 | 検索結果 | - |
大田区 | 61 | 734,381 | 2607 | 1 | 当該ページ | - |
葛飾区 | 35 | 452,761 | 2103 | 1 | 当該ページ | 多機能総合アプリ |
北区 | 21 | 351,663 | 1556 | 4 | 検索結果 | - |
江東区 | 40 | 515,029 | 1929 | 3 | 検索結果 | 地域SNSと連携 |
品川区 | 23 | 403,338 | 1745 | 2 | 検索結果 | ARまち歩き |
渋谷区 | 15 | 231,700 | 937 | 1 | 当該ページ | 保育園支援システム |
新宿区 | 18 | 346,958 | 1464 | 2 | 検索結果 | QUOカードプレゼント付き健康アプリ |
杉並区 | 34 | 579,877 | 1956 | 5 | 検索結果 | いじめ相談 |
墨田区 | 14 | 266,605 | 1148 | 4 | 検索結果 | 隅田川花火大会で期間限定アプリ |
世田谷区 | 58 | 929,448 | 3019 | 7 | 一覧 | 高齢・介護応援 |
台東区 | 10 | 205,659 | 1006 | 2 | 検索結果 | 隅田川花火大会で期間限定アプリ |
中央区 | 10 | 15,758 | 897 | 3 | 検索結果 | - |
千代田区 | 12 | 5,417 | 619 | 4 | 検索結果 | 戦争体験記録集 |
豊島区 | 13 | 300,179 | 1246 | 3 | 検索結果 | 性暴力被害者支援機関情報提供アプリ |
中野区 | 16 | 338,069 | 1242 | 3 | 検索結果 | 区民の声投稿アプリ |
練馬区 | 48 | 735,121 | 2636 | 1 | 当該ページ | - |
文京区 | 11 | 230,184 | 966 | 2 | 検索結果 | - |
港区 | 20 | 256,415 | 1388 | 6 | 一覧 | 地域SNSと連携 |
目黒区 | 15 | 285,110 | 953 | 1 | 当該ページ | - |
昭島市 | 11 | 111,942 | 205 | 3 | 検索結果 | 省エネ家計簿 |
あきる野市 | 73 | 80,242 | 308 | 4 | 検索結果 | - |
稲城市 | 18 | 90,774 | 345 | NA | NA | |
青梅市 | 103 | 134,857 | 502 | 3 | 検索結果 | - |
清瀬市 | 10 | 75,400 | 301 | 2 | 検索結果 | - |
国立市 | 8 | 75,022 | 319 | 2 | 検索結果 | 期間限定コミュニティサイクル実証アプリ |
小金井市 | 11 | 124,712 | 423 | 3 | 検索結果 | 小金井市制作まちアプリ |
国分寺市 | 11 | 126,317 | 449 | 4 | 検索結果 | 認知症チェック |
小平市 | 21 | 194,757 | 665 | 3 | 検索結果 | 環境家計簿 |
狛江市 | 6 | 83,003 | 284 | 4 | 検索結果 | - |
立川市 | 24 | 180,214 | 741 | 2 | 検索結果 | ファーレ立川アートナビ |
多摩市 | 21 | 147,822 | 540 | 3 | 検索結果 | - |
調布市 | 22 | 237,637 | 925 | 1 | 当該ページ | - |
西東京市 | 16 | 203,258 | 744 | 5 | 一覧 | HP更新通知アプリ |
八王子市 | 186 | 577,254 | 2009 | 1 | 当該ページ | オープンデータ対応アプリ紹介ページ |
羽村市 | 10 | 55,004 | 234 | NA | NA | - |
東久留米市 | 13 | 116,309 | 431 | 1 | 当該ページ | - |
東村山市 | 17 | 150,101 | 542 | 1 | 当該ページ | - |
東大和市 | 13 | 84,480 | 503 | 2 | 一覧 | - |
日野市 | 28 | 188,990 | 650 | 1 | 当該ページ | - |
府中市 | 29 | 263,835 | 972 | 2 | 検索結果 | - |
福生市 | 10 | 58,184 | 268 | 1 | 当該ページ | こっち向いて!たっけー(ゲーム) |
町田市 | 72 | 433,938 | 146 | 4 | 検索結果 | 道路の不具合通報アプリ |
三鷹市 | 16 | 191,408 | 688 | 3 | 検索結果 | 図書館アプリ |
武蔵野市 | 11 | 147,607 | 635 | 2 | 検索結果 | - |
武蔵村山市 | 15 | 71,804 | 103 | 2 | 検索結果 | - |
奥多摩町 | 226 | 5,023 | 62 | NA | NA | - |
日の出町 | 28 | 17,226 | 89 | NA | NA | - |
瑞穂町 | 17 | 32,867 | 152 | 2 | 検索結果 | 気象観測装置「POTEKA」 |
檜原村 | 105 | 2,073 | 37 | NA | NA | - |
大島町 | 91 | 7,552 | 94 | 1 | 当該ページ | ARアプリ「むかしめがね 伊豆大島編」 |
利島村 | 4 | 347 | 15 | NA | NA | - |
新島村 | 28 | 2,634 | 46 | 1 | 当該ページ | しまっぷり~新島・式根島観光ガイド |
神津島村 | 19 | 1,847 | 25 | NA | NA | - |
三宅村 | 55 | 2,347 | 45 | NA | NA | - |
御蔵島村 | 21 | 340 | 18 | NA | NA | - |
八丈町 | 72 | 7,249 | 71 | NA | NA | - |
青ヶ島村 | 6 | 169 | 9 | NA | NA | - |
小笠原村 | 107 | 3,039 | 44 | 2 | 検索結果 | - |
杉並区が新アプリをリリースする前にやるべきこと
一覧を作って知ったことですが、東京都が防災アプリと子育て支援アプリを開発し、各自治体がそれに乗っかるかたちでそれぞれの地域版のアプリを配信しているのですね。「○○区 防災 アプリ」「○○区 子育て アプリ」のように検索すれば該当するダウンロードページにいけます。また多くの自治体広報紙電子版が「マチイロ」で配信されています。したがって、防災アプリ、子育て支援アプリ、広報紙リーダーは割と容易にリリースできるスキームは出来上がっています。ちなみに、東京都ではそのほか、植物館アプリ「YumeNetsu」、庭園・動物園散策アプリ「Tokyo Parks Navi」、聖地巡礼アプリ「東京ロケたび(TOKYO LOCATION GUIDE)」、観光公式ガイド「東京ハンディガイド」を配信しています。
けれども、ニーズがないのでしょう。そのスキームを利用していない自治体があります。そんな中で、杉並区が独自にリリースした4つのアプリのコンセプトは先進的なものと評価できると思います。が、平時の一般的な区民の生活習慣には役に立つのは「なみすけのゴミ出し達人」だけで、その他は認知という意味でも、また継続利用性という意味でも、なかなか厳しいと感じました。
今後も新アプリをリリースする計画があるならば、その前にやるべきことがあります。それはまず、毎年、東日本大震災のあった3月11日以降の一定期間、防災アプリ(すぎナビと地震被害想定AR)のダウンロードキャンペーンを行うことです。次に、ホームページにアプリ一覧ページを作ることです。これにより、統合化という選択肢も現実的になっていきます。
新アプリについては、他の自治体のいいとこ取りをして、開発工数を短縮してみてはどうでしょうか。具体的には、葛飾区が配信している統合アプリ、世田谷区の介護・高齢者対応アプリ、三鷹市の図書館アプリです。ゆるキャラ(マスコット)の存在がこういうときに役立つような気もします。
非常時に役立つアプリ。区民がその時、すぐに起動させる動機づけを醸成すること。それが自治体によるアプリ開発・運用の戦略ではないかと思います。
いろいろ書きましたが、MAUとかWAUとかDAUとか言いません。ご検討のほど、よろしくお願いします。